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【後編】ANCIENT SHIRTS|color by Hljóð
はじまりの白い布がめぐり、生まれたかたち
WONDER FULL LIFE がフォークシンガーの森山直太朗さんより手渡された白い布から生まれたふたつのシャツの物語。
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前編はこちら
https://www.wonderfulllife.link/?p=1713&preview=true
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シャツができるまで
2025年初夏、益子にある古道具屋 Pejiteで行われた直太朗さんのアルバム「弓弦葉」のライブシューティング。その舞台には、国も年代も異なるさまざまな家具が混ざり合うように置かれていました。
楽器を奏でる人、唄う人、聴く人、そこにいるすべての人が、同じ舞台の上で境のないかたちで過ごした同じ時間。この場所に溶け合うような服がつくれたらと、中世ヨーロッパ時代に男性たちが着ていたシャツの古着から着想を得て、短い丈と長い丈のシャツを思い描きました。
デザインする上で当時の洋服のディテールや仕立てを細かく見ていくと、流れていた時間や用途が浮かび上がってくる。舞台で使われた白い布を持ち帰り、袖の丈やギャザー分量を細かく確認しながら、身体が揺れた時に光が透けるバランスや、ギターを弾く時に布が揺れるリズムを想像しながら試行を重ねていきました。
シャツに合わせたボタンは時と共に経年変化を感じられるように、岡山に工房を持つ真鍮作家のLueの菊地流架さんがひとつひとつ手作りでつくっている真鍮のものを選んでいます。
染めて映した色
色はどこか音楽に似ている。
古来より、染めて色を映すことには、目に見えない力が宿ると言い伝えられてきました。どちらも形をもたないもの。けれど、記憶の奥底に眠る感覚を呼び覚まし、おおらかに包み込むような力をもっています。
楽器にかけられた白い布。
古い家具に寄り添うように飾られた、花屋 Hljóð(ヒュード)の草花。
何かがはじまる予感をまとった舞台の景色と色彩を、布に映せないだろうかと閃き、舞台で役目を終えた草花を、色を抽出し染料へと変えるために、その日の真夜中にボタニカルダイのラボへと運び込みました。
染色の工程で色の再現性を高めてくれるのは、数値ではなく、人の手加減です。
その日の温度や湿度に合わせ、刻一刻と変化する環境に寄り添う職人の技。
彼らの高い技術と感性によって、舞台で感じた Hljóð の草花がもつ、やわらかな空気を纏った色彩が生まれました。
ものが溢れる時代に「何をつくらず、何をつくっていくのか。」
私たちのまわりには、矛盾や違和感をやわらかく受け止めながら、遠回りとも思える非効率な道を、ともに歩んでくれる仲間がいます。
このシャツが、届くべき場所へと届き、あたらしい時間を重ねていくこと。
そこに、静かな歓びを感じています。
ANCIENT SHIRTS|botanical dye color by Hljóð
https://bywonder.link/pages/syn-why-keep-making