Perspective 02_ きらめきを捉える。

奥底に静かな輝きを湛えるWONDER FULL LIFEの彩りは、奄美大島の染色家、金井志人(かないゆきひと)さんによるもの。

「父が創業した工房は、ずっと大島紬の染めに携わってきました。でも、僕には仕事を始めた当初から『この伝統をそのまま継承するだけでいいのだろうか』という疑問が心のどこかに引っかかっていたんです」

伝統の頂点を極めることよりも、複雑な数式のように多様な事柄が組み合わせで起きた化学反応によって、色が生まれていくことの面白さに心惹かれたという彼は、奄美大島に伝わる泥染めの技法をベースに、大島紬以外のさまざまなものに挑戦しながら、新しい色の世界を模索していきます。

「奄美の色は、自然の力を借りなければ表現できないもの。それは全部生き物との対話から生まれるものなんです。土、水、光のなかに潜んでいるものを引き出し、再構築していくと新しい色が現れてくる」

移ろい、刻々と姿を変える自然は、一秒たりとも同じ状態で存在することはありません。絵具のように色を思い通りにコントロールできずとも、試行錯誤を重ねているうちに、バラバラだったピースがぴたっと一つの型にはまるような奇跡の瞬間が現れる。金井さんは、その一瞬のきらめきを的確に捉えようと、作業中は何事も考えることなく、ひたすら色の変化に集中しているといいます。

一方で、7世紀にまで歴史を遡る伝統の技の本質的な価値を消すことなく、自分が生きる時代にどのように反映させることができるかも大きな課題でした。

「工芸の多くは縦軸で物事を追求することで発展を遂げてきました。でも、もっと自由な感覚で広く世界を眺め、横、斜め、奥行き、時間軸など、多方向に視点を動かしていくと、日常にあるすべてのことが、奄美の伝統とつながっているんだと思うようになりました」

大島紬のほか、数多くのアパレルブランドとの協働を行う金井さんですが、多ジャンルの作家が一つのものづくりを循環していくWONDER FULL LIFEの活動は、金井さんにとって、さらに自由な観点を見出す良い経験だったといいます。

「僕の感覚も常にうごめいていて、雑多。答えが無限大にあると同時に、行き場を失ってしまうこともある。WONDER FULL LIFEのクリエーションは、バラバラのメロディが美しいハーモニーになっていくバンドのセッションのよう。メンバーが感覚を交換し、いろんな起伏を乗り越えているうちに、あらためて自分の核となる部分がくっきりと浮かび上がってくる。とても純度の高い時間なんです」

ときにそれは激しいビートのドラムだったり、滑るようなベースラインだったりと、表現はさまざまですが、WONDER FULL LIFEのなかでたしかな躍動を刻み続ける金井さんの色。みなさんの心には、どのような響きが届いているでしょうか。

Text_ Hisashi Ikai
Photo_ Masako Nakagawa